川崎市の「鷺沼駅周辺再編整備に伴う公共機能に関する基本方針(案)」に対する
鷺沼駅前再開発と区役所等移転を考える会の見解と提案

2019年4月24日
鷺沼駅前再開発と区役所等移転を考える区民の会 共同代表 小久保善一

はじめに

表題をみる限り意味する内容がわかりにくいと思いますが、端的に言えば「鷺沼駅前再開発に伴い、 現区役所・市民館・図書館を廃止し、鷺沼に移転させる」という内容です。

これまでの市の計画にもなかったことが、一般区民の討議わずか8ヶ月で市の基本方針を策定するという川崎市の住民無視のやり方に批判が噴出していました。

基本方針(案)に対するパブリックコメント(意見書)が、1か月の短期間にも関わらず、 前代未聞の17,840通も提出されたことは、区民合意がないことを示しています。

市は、区民合意ができていないことを踏まえ、区民の声を真摯に受け止め、具体的事業に反映させることを強く求めます。

「区役所移転を考える会」では、この問題は、宮前区民の暮らしや街づくりに関わる重大問題であることから、 市は民間事業者ペースに委ねることなく、市の責任で宮前区民23万人全体の暮らしが便利になる街づくりをすることを提案してきました。

これまでの経緯を振り返り、市の基本方針に区民意見が反映されたのか? 問題点はなにか? 以下、考える会として、「経緯・提案・基本方針(案)の問題点・パブコメ結果に対する見解」などをまとめてみました。

川崎市宮前区について

川崎市は人口152万人の政令指定都市、7区制で宮前区は1982年に高津区の分区により誕生しました。田園都市線や東名高速道路川崎インター開通とともに市街地整備がされ郊外住宅地として開発された街です。

人口は当時より1.5倍に増え、現在は23万人が暮らす。納税額も3.5倍に増え、市内2位の高額納税区だが、市民館や図書館は他区と比較して整備が遅れ、区民は不便をきたしています。

山坂が多い地域で高齢化も進む中、バス等による足の確保が強い要望となっています。

現在の区役所・市民館・図書館・消防署等は地域的には区の中心である宮前平にありますが、鷺沼は横浜市まで600mの市境にあります。

これまでの経緯

市は、東急電鉄(株)と2015年に包括連携協定を締結。
2017年8月鷺沼駅前地区再開発準備組合を設立し、計画区域約1.9haで民間活力を活かした地域生活拠点ずくりとして「交通利便性の向上、多世代が訪れ、交流し多様なコミニテイ形成に寄与する空間づくり、駅前に住む、働く、過ごす機能集積」を構想しました。

区民に対して「鷺沼駅周辺再編整備に伴う公共機能の検討に関する考え方」(案)を公表したのは1年前の2018年2月、区民意見を聞くためのフォーラムや意見交換会を開始したのは5月末、それから、わずか8ヶ月で基本方針(案)を出すという超強行スケジュールでした。

この間に「宮前区向丘地区連合会自治会」や「区役所移転を考える会」等から「具体案を示さないまま、拙速な決定をしないで欲しい」という趣旨の陳情が提出され、文教委員会で審議されましたが、採択を求めたのは共産党だけで「民間事業者をこれ以上待たすことはできない」 として否決されてしまい、2019年2月4日に基本方針(案)が発表されました。

考える会の活動

これまでに取りくんできたこと

市が一方的に「移転ありき」で進めるやり方に、多くの区民から批判や反対意見がでていました。 区民の暮らしに関わる重大問題であることから市と区民の時間をかけた十分な議論が必要である考え、 「鷺沼駅前再開発と区役所等移転を考える会」を2018年12月に立ち上げました。

    1.  
        陳情「宮前区民の合意なく、現区役所・市民館・図書館の拙速な移転はしないでください」に取り組み2600筆の署名を添えて (未提出分併せて4000筆)市に提出。1月24日の文教委員会で審議されましたが、否決されました。
      1. 基本方針(案)が出されてから、パブリックコメント1万通を目標に、意見書提出の運動に取り組みました。 全国の都市再開発問題に取り組んでいる「NPO法人区画整理・再開発対策全国連絡会議」の遠藤哲人氏を講師に依頼し、 2月17日に学習会を開催、50名ほどが参加しました。

        講師からは、「川崎市は具体像がないままパブコメにかけたが、商品の中身を見せずに買わせるようなもので本来ありえないこと」 「都市計画の決定権・再開発組合設立や権利変換の認可権は民間事業者ではなく川崎市にあること」等の指摘があり、 参加者の自信になったことが、運動の大きな力になりました。

        会に寄せられた多数の意見を整理し、ホームぺージに記載、意見書提出を呼びかけたり、陳情提出者に協力を依頼し、 訪問や駅頭宣伝等もする中で大きく運動が広がりました。

        結果、考える会からは,3月6日に13,858通の意見書を提出、記者会見を実施、新聞やテレビニュースでも取りあげられ、広がりをつくることができました。

      考える会の基本的考え

      1. 宮前区民23万人全員が、それぞれの地域で不便なく暮らせる街づくりを行うこと
      2. 川崎市は「自治基本条例」にもとづき、住民参加で住民の声を市政に反映させる責任があること

        川崎市の「自治基本条例」に定めた市民の4つの権利は以下の通りです。

        1. 市政に関する情報を知り共有すること。
        2. 政策の形成、執行及び評価の過程に参加すること。
        3. 市政に対する意見を表明し、提案すること。
        4. 行政サービスを受けること。
      3. 都市再開発事業の計画を認可する権限は、民間ではなく政令指定都市の川崎市にあること

      市の説明では「鷺沼再開発は民間事業者による事業です、市は皆さんの声を準備組合にお届けしてきました。 しかし、これ以上民間事業者である準備組合を待たせることはできません」として区民との話しあいを打ち切り、 2019年2月4日の基本方針(案)の発表となりました。

      しかし、都市再開発法によれば、「再開発事業の都市計画の決定権や事業主体である再開発組合設立の認可権は、 指定都市としての川崎市にある」のです。市は区民に対して「区民の暮らしが便利になる街づくり」 をすすめる責任の下に決定しなければなりません。

会からの4つの提案

区民合意のない基本方針は見直をしてください

短期間にも関わらず、17,840通という多くの意見書が提出されるのは異例のことであり、 区民合意が図られていない証拠です。

今後、市は自治基本条例にもとづき、区民合意のない基本方針を見直し、区民意見反映に努めてください。 また準備組合からの説明は未だ何もありませんが、区民説明会を実施し、事業への区民意見の反映をしてください。

災害対策とコスト面を考慮して、現区役所を存続させ、鷺沼と向丘に区役所支所を設けてください。

  1. 鷺沼駅周辺は沢地を17メートルも埋め立てた軟弱地盤で土砂災害警戒区域に指定されています。 第2次緊急避難道路もありません。災害時に駅前の交通混雑が予想されるなど、 災害対策本部となる区役所を鷺沼に設置することは適切ではありません。(別紙資料4参照)

    またコスト的に見ると、市の公共建築物の長寿命化計画では60年以上とされており、 学校等は80年としている中で、現区役所を築36年で廃止するのは大変なムダ使いです。

    他都市の例を見ると駅前高層ビルの床は民間の2~3倍で買わされます。 購入後も維持費や管理運営費がかかり多額な税負担を続けなければなりません。

    今の区役所ならば市の土地であり、修繕費はかかるが土地購入費も管理費もかかりません。

    こうした災害対策とコスト面の2つの理由から現在の区役所を存続させることが必要です。

  2. その際は、宮前区は細長い地形で山坂が多く、交通が不便であることを考慮し、鷺沼と向丘地域に区役所支所を設け、 証明書発行、届け出業務や福祉相談、サービス提供ができるようにしてください。 川崎区役所も区の端に位置することから大師と田島の2つの支所を設けている先例があります。

現在の市民館と図書館を存続させ、鷺沼にも市民館・図書館を設けてください。

宮前区の誕生から36年、この間に人口は1.5倍に増え、市税収入は3.4倍に増えました。 この期間に川崎市平均の税収2.2倍増に比較し、宮前区の増収は際立っております。

本来なら、市民の文化を育む社会教育施設である市民館や図書館を増設する必要があったのに、 市は増設してきませんでした。

そのため、宮前区は市内7区の中でも多摩区と並び最も遅れています。

  1. 市民館は、「ホールや会議室」があり、イベントや各種の講座を開催する他、集会や会議室として貸し出す等、 市民の文化活動にとって重要な役割を果たしています。

    ホールや会議室は市民館の他にも様々な施設名で設置されていますが、それらを区ごとに合計すると次の通りです。 (別表資料2参照)

    宮前区の会議室数を他区と比較してみると、川崎区の18%、中原区の24%、高津区の23%と大幅に少ない。 また座席定員も、川崎区の15%、中原区の27%、高津区の30%です。

    大中小含むホールの数は、川崎区8、中原区7、高津区6に比べ宮前区は4ヶ所です。

    ホールの利用定員は、川崎区3,575人、中原区1,798人、高津区2,250人に比べ宮前区は910人と少ないのが現状です。

    以上の通り、宮前区は他区より、ホールや会議室が大変少ないため、会議室やホールが容易に予約できず、 市民活動に支障をきたす状況にあります。

  2. 図書館は、赤ちゃんから高齢者まで全ての人々の日々の生活を豊かにするのに欠かせない、 人類の英知の宝庫です。読み、調べ、学び、交流し、必要な情報が得られる教育機関として、 私たちの自立と地域社会の発展になくてはならない施設です。

    歩いて行ける距離に図書館があり、日常的に自由に使えることが大事です。

    川崎市には、図書館本館と分館で合計12館ありますが、宮前区は1館しかありません。

    また、川崎市作成の「平成29年度川崎市立図書館統計」で区別比較してみると、 宮前区は入館者数や読書相談・予約リクエストは全市の15%と多いのに、図書整備費は490万円で全市の4.4%。 管理運営費は僅か0.06%と少ない経費で運営しています。(別表資料6参照)

    20政令市で比較すると、市民一人当たりの図書資料費は静岡市の307円に対して川崎市は75円と少なく、 図書館数も、さいたま市(127万人)の25館に対して川崎市は12館と少ないのが現状です。

    このように川崎市は20政令市比較でも、市内7区比較でも大変遅れている宮前区です。

    現市民館・図書館の存続と、鷺沼にも市民館・図書館を設置してください。

鷺沼駅前再開発の具体像を示してください。

  • 高層ビルの容積率、床面積、高さ、維持費、管理費、ビルにおける権限と義務は?
  • 今でも狭い駅前に作る交通結節機能、バス路線、駐車場面積や駐輪場の台数、渋滞対策?
  • 大災害に備えた災害対策と災害時の本部機能をどう果たすか、災害時の渋滞対策、避難所?
  • ラッシュ時の電車の混雑度と対策は?
  • 公共機能の規模内容、住宅や商業施設等の規模内容、官民連携の中身?
  • 大規模店舗による地元商店街への影響と対策?
  • 鷺沼駅前再開発にともなう環境アセスの結果と対策は?
  • 全体の予算規模、公益施設の整備費と保留床価格、公益以外の保留床価格?
  • 国と市の補助金額、その他市の負担額はいくら?
  • 大規模商業施設による地元商店街への影響と対策?

基本方針(案)の問題点

「基本方針」には、この間に出された区民の意見が反映されていません。(詳細は資料1を参照)

  1. 市は、区民意見を聞くために、「区民50名の意見交換会」や「延べ550名参加のフォーラム」 「アンケート」等を実施してきました。

    こうした中で出された意見は「鷺沼にこのような公共的機能が欲しい」という意見がありましたが、 「今の区役所・市民館・図書館を廃止して鷺沼に移して欲しい」という意見はありませんでした。

    逆に「今の区役所・市民館・図書館を廃止しないで欲しい」「この問題を知っている市民が10%と少ない中で拙速にきめないで欲しい」 「区民が対立するようなことは避けて欲しい等の意見が出されていました。

  2. 市が委託した外部専門家による基礎調査では、鷺沼移転のメリットとしては、 「交通結節機能」と「民間と公共機能の融合」が期待されるとされていますが、鷺沼優位の決定的な意見はありません。

    逆に災害対策上は多くの点で、宮前平が優位であり、鷺沼に災害対策本部となる区役所を移転する場合は、 リスク分散のため宮前平との2拠点体制を提言している状態です。

  3. 市の説明では「移転しなければならない理由はありません」「移転賛否の議論はしていません」 「鷺沼にどのような公共機能が必要かの意見を出していただくものです」と説明していました。

    ところが、2月4日に市が発表した「鷺沼駅再編整備に伴う公共機能に関する基本方針」(案)は、 市民からの要望のない「現区役所・市民館・図書館を廃止、鷺沼に新設」という方針(案)が突然示されました。 どうして、それまでの経過に反する基本方針(案)が示されたのか、全く納得できません。

  4. 公共機能移転の唯一の理由は「2018年3月策定の川崎市総合計画に鷺沼駅周辺再開発が位置づけられているため」 と説明されますが、総合計画でも川崎市都市計画でも「鷺沼・宮前平」の2つの地域を「地域生活拠点」として位置づけており、鷺沼だけに限定してはいません。

    まして「地域生活拠点である宮前平にある現区役所・市民館・図書館を廃止して、鷺沼に移転させる」 という計画等は市の計画のどこにもないのです。

  5. 市民的には、アンケート結果を利用し、「今の区役所は交通不便で不満な市民が多いことを理由に、 鷺沼に交通結節機能を設ければ便利になります。市民のみさん、その際は、鷺沼にはどんな公共機能が欲しいですか?」という筋立てで議論を進め、 区民合意がないまま、いや区民合意の議論が深まる前に、決めてしまったというのが本当のところだったと思います。

  6. わずか1年という短期間で基本方針を早期に決定するため、 こうした区民意見を取り仕切る実績のある業者に600万円もかけて1年契約していました。

    その期限が2019年3月でしたから、川崎市が業者に委託した期限通り、開発準備組合のスケジュールに沿って業者がまとめたということになります。

    そこには、市民の意見反映は、スケジュールにはなかったのかもしれません。

パブコメの結果.反映されなかった主要意見について

パブリックコメントに提出された意見は17,829通ありました。

基本方針に反映されたのは12件。多数の方から寄せられたが反映されなかった5つの主要意見に対して「市の考え(抜粋)」 を発表しています。それに対する「考える会」の見解は以下の通りです。

市民合意のない基本計画に反対である。時間をかけて検討をすべきだ。なぜ民間事業者の再開発スケジュールを優先するのか。

<市の考え>

  1. 鷺沼・宮前平駅周辺地区は、本市総合計画において「地域生活拠点」として位置付けられ、鷺沼駅前広場を民間活力により再整備をするとされており、今回の民間事業者による再開発は、この計画にそったものだ。
  2. パブリックコメント手続きを含め、これまで把握してきた区民の皆様の意見については、お住いの地域や年代、ライフスタイル等により、多様な考え方、 捉え方があるものと認識しており、本市として基礎調査などの結果等と合わせて総合的に整理・検討し公共機能の基本的考えを示した。
  3. 区民意見を踏まえた本市の方針を準備組合が進める再開発計画に着実に反映させるため、民間事業者のスケジュールを考慮し、2019年度内に基本方針を策定する。

<会の見解>

市の考えを要約すると「鷺沼駅前再開発はすでに総合計画に位置付けられているものである。区民の意見は、 そもそも住んでいる地域や年代により多様なのだから合意は困難なもの、今後も民間事業者のスケジュールに合わせて進めていく」 ということだ。

  1. 2017年策定の川崎市総合計画では、「鷺沼宮前平駅周辺を地域生活拠点」としている。 さらに同年策定の都市計画では、鷺沼(約11ha)と宮前平(約4ha)の2地域を2号再開発促進地区として指定し 「駅を中心に高齢者等の多様なライフスタイルに対応した都市機能集積及び交通結節機能の強化をはかる」としている。

    これらの計画では鷺沼一極集中ではなく、宮前平も鷺沼と並ぶ重要な開発促進地区とされているのだ。 このことからも、宮前平を衰退させるような現区役所廃止・移転は考えられない。

    現区役所・市民館・図書館を存続させたまま、鷺沼に支所と2つ目の市民館・図書館の設置こそ、 総合計画や都市計画にそった解決と考えられる。

  2. 市は、今まで区民の意見を反映させるとしてきたが、 市長発表で「区民の意見は地域や年代…により多様な考えがあると認識している」と言い切ったことに愕然とした。 最初から移転ありきで、区民意見を反映させ、合意点を見出そうとする考えは無かったのではないかと思われる。

    区民としては、区民間の意見対立を避け、話し合いで区全体が便利になる解決を望んでいたのだ。

    市が時間をかけて区全体を考えた街づくりを進めていれば、このような後味の悪い決定にはならなかったと思う。

市民利用施設が足りない、移転ではなく、市民館・図書館分館を設置すべきではないか。

<市の考え>

  1. 各区に1館ずつ設置している市民館及び図書館並びに既設の分館等を軸としながら、 地域で活動する様々な主体や区内の諸施設との連携及び学校施設の有効活用などの手法を総合的に用いて幅広い地域で生涯学習事業を推進する。
  2. 現区役所周辺に住まいの方から、今ある施設を残して欲しいという意見がある。現区役所等施設・用地の在り方について、意見を伺いながら検討する。

<会の見解>

  1. 市民館には、ホールや会議室などがあり、区民の催し物や講座を開催したり、貸し会議室など区民の生涯学習施設として区民活動の重要拠点となっている。 「区民館」名称の施設は各区1つだが、ホールや会議室を所有する生涯学習施設は様々な名称で沢山の施設がある。そうした施設を合わせると、 宮前区の会議施設数や会議室定員は中原区や高津区の30%以下と少ないため、会議室不足で区民活動に不便をきたしている。
  2. 図書館は、他区は分館を含め2館ある(中原区は大規模1館)が宮前区は、他区に比べ利用者が多いにもかかわらず1館しかない。

    宮前区は人口が1.5倍に増え、市税収入も3,4倍に増えているのに、市民館や図書館を増やさずにきたため、 他区に比較して生涯学習に不便をきたしている。まずは他区並みに増設する必要がある。こうした現状を抜きに、 学校施設などの有効利用に委ねるのは無責任であり、同じ納税者に対する差別的扱いだと思う。他区の施設を使えばよいというが、 遠方では交通費も時間もかかる。宮前区民は区に対する愛着がないというが、行事など区内で盛り上がる場所づくりを抜きに区民ばかり責められまい。 せめて他区並みの整備を求めたい。

災害対策本部の2拠点体制やリスク分散、被害想定で差異がないというのはごまかしだ。 土砂災害警戒区域や盛土など、防災面で鷺沼は危険。区役所等は現位置のままとすべきだ。

<市の考え>

  1. 想定地震による液状化危険度、浸水被害、津波浸水被害予測について両区域で差異はない。区役所と消防署・警察署が2ヶ所に分かれることによる連絡調整上でのデメリットはあるが、立地の特性を活かした取り組みを行う。 防災訓練による連携強化をはかり、防災無線や災害用電話など利用しながら関係機関と連携し、災害対応を行うとしている。

<会の見解>

  1. 外部専門家による両地域比較基礎調査では、鷺沼駅周辺は、「土砂災害警戒区域に指定されていること、第2次緊急避難道路がないこと、 駅前の交通混雑などの点で、宮前平が優位」とされており、一極集中をいいながら防災に関してはリスク分散のため鷺沼と現消防署の2つの拠点と言わざるを得ない弱点を抱えている。

    このことがあってか今回の見解の中には、土砂災警戒区域への見解が欠落しているのは注目される。 防災訓練や防災無線の使用で連携をはかることや建物の耐震性や耐火性の向上や交通渋滞への対策で解決できるのであろうか?

    鷺沼一極集中でバス路線の結節点にする計画だが、公共施設(保健所の乳幼児健診も入る)や商業施設等で人の往来も多くなり、 今より大幅にバス、車、バイク、自転者が増えることになる。

    しかし他の駅前公共施設をみると駐車場台数は多くは見込めず、商業施設と共同で駐車料金も30分250~200円の有料、 なにより駐車待ちで大変な交通渋滞が予想される。

  2. また、コストの面では、外部専門家による基礎調査によると、「両地区の優位性は設定期間等 により大きく変わるので、どちらが優位と言えない」としている。

    しかし、築36年の区役所・市民館・図書館の自前の施設を廃止すことによるムダ使いや、管理費や大規模修繕積立金等の膨大な経費もあり、移転の方が経費がかかることが明らかではないか。

    なにより、区役所もビル管理組合の一員となり自由度が制限され、責任だけが負わされることになる。

    30年以内に大地震の確率が70%と言われる中で、災害対策とコスト面、自由度からして現区役所を存続させ災害対策本部とすること、 鷺沼には区役所支所を設けることが妥当な判断と思われる。

跡地の計画を併せて示すべきだ。現区役所等周辺地域の行政サービスが著しく低下する。 区役所窓口機能や市民館・図書館を残して欲しい。

<市の考え>

  1. 現区役所施設・用地については「市が保有し続けるべき」「防災機能、地域活動の場、スポーツ広場、区役所窓口や図書館を残す」などの意見をいただいている。
  2. 跡地の活用では、「市による施設・用地確保」「宮前区全体と周辺エリアの将来を見据えた課題やニーズの整理」「市民参加による検討」を基本的な考え方として2022年度を目途に当施設・用地活用の基本的考え方を定める「(仮称) 宮前区役所等施設・用地の活用に関する基本方針」の策定に向けた取り組みを進める。

<会の見解>

今までの基本方針が出されるまでの経過をみると、市がいかに弁明しようが区民から見れば、最初から民間事業者優先、 移転ありきで話が進められてきたと考える。区民の意見を聞き、合意を見出そうとする市の姿勢を感じることができず、 不信感が募るばかりという区民の意見が多い。

市は鷺沼駅周辺の再開発を優先させ、宮前区全体の街づくりを考えることなく、 区民の合意がないまま区役所・市民館・図書館の移転を強行してきた結果だ。

この間の経緯を反省し、区民の意見を真摯に受け止め、今後は宮前区全体が暮らしやくなる街づくりの視点のもと、 現区役所・市民館・図書館の存続とバス路線の不便解消を進めていただきたい。

再開発の全体像が示されないで、必要経費等が算出できるのか、至急に明らかにすべき。

<市の考え>

  1. 国土交通省監修の「建築物のライフサイクルコスト」等の公的基準にもとづいて一定の条件を仮定し、経費比較をおこなった。
  2. 基本方針において、現時点の再開発コンセプトや施設ゾーニング等を示した。具体的な施設計画は、 今後環境アセスメント手続き等を通じて示されてくるものと考えている。

<会の見解>

  1. 市は「公的基準にもとづいて一定の条件を仮定して経費を計算した」というが、 通常の消費者感覚からすると大きくずれている。消費者が買い物をする時には、 具体的な商品の中身をよく確認し、所持金を確認し、購入するかを決めるのが通常だ。 まして多額な税金を使うのであれば一層の慎重さが要求される。

    今回の場合は、具体像もないまま、税金もどの位使用されるのか、全く区民に明らかにされないどころか、 図書館の補助金見込み23億円を差し引いて比較計算することまでしている。

    鷺沼再開発のように市街地再開発事業に対しては、国にも自治体にも補助金交付要綱があり、 調査設計計画、土地整備、共同施設整備、建築物の防災性能の強化に関する費用などを対象に自治体が3分の1、 国が3分の1合計3分の2の補助があると聞いて驚いた。 それ以外にも各省庁などからの補助金もあり図書館の23憶円はそこからかもしれないということだ。

  2. 市と国から多額の税金が使われるのに、区民の意見より民間事業者が優先されるなんて、おかしい。 開発内容と補助金も含めた経費を早期に明確にして欲しいと思う。

    多額の税金を使い、公共施設を移転させるというのに、今後について、市の考え②のような準備組合お任せ的態度は許されません。 都市計画の決定権は川崎市にあること、市は23万区民全員に責任をもっていることを肝に銘じて、今後の取り組みをすすめていただくことを要望したい。

今後に向けて

市が基本方針を策定したからと言って、全てが決まった訳ではありません。

現在、個人名で公文書開示請求もしています。

まだ、具体案を示していないのです。今後は都市計画決定に向けていろいろの動きが出て来ます。

事業者からの具体案、環境アセスメント、都市計画審議会など、それぞれの段階で区民が意見を言える機会があるのです。 あきらめず、意見反映を求め、大きな運動にしていきましょう。

再開発に向けて私達の多額の税金が投入されることを忘れてはなりません。

資料一覧

  1. この間の区民意見と外部専門家の基礎調査は反映された?
  2. 川崎市の7区別に見た市民利用施設比較一覧表から見えること

    市民館等主な施設のホール・会議室・音楽室等の規模と部屋数・定員

  3. 川崎市の7区別に見た市民利用施設比較一覧表
  4. 川崎市ゆれやすさマップ

    ページ1.地図でみると鷺沼周駅周辺は大当たりの地域

    ページ2.説明

  5. 鷺沼駅周辺の地質調査のインターネット検索方法
  6. 川崎市作成の「平成29年度川崎市立図書館統計」で7区別比較から見えること
  7. 私たちが考える6つの提案

    川崎の文化と図書館を発展させる会より