鷺沼駅前地区第1種市街地再開発事業に係る

       条例環境影響評価方法書に対する見解

2019年9月6日

宮前区役所・市民館・図書館の移転に反対し鷺沼駅前再開発を考える会
共同代表: 小久保善一・秋好賢一

 

1.鷺沼駅前再開発の環境アセスメントは926日まで、意見書提出をしましょう

鷺沼駅前地区第1種市街地再開発事業に係わる条例環境影響評価方法書(環境アセス方法書)が、開発準備組合から提出され、川崎市は2019813日から926日まで公告縦覧をし、市民に意見を求めています。会としては、区民の立場に立った再開発になるよう、多くの皆さんに意見書の提出を呼び掛けたいと思います。

2.開発準備組合と川崎市は、環境アセスの前に、開発内容を住民に説明すべきです


鷺沼再開発地は1.9haで広い土地ではありませんが、146m37階建ビルと92m20階建て

ビルの超高層ビル2棟の建設計画であるため、大規模開発である第1種開発事業となり、厳しい

環境評価が求められることになりました。823日、市との話し合いで 下記事項を要望しました。

@          公告縦覧・意見書提出期間は盆休みの8月13日~9月26日までですが、公告縦覧用の環境評価方法書が当該宮前区役所に配備されたのは、区民23万人に対して縦覧用1冊、貸出用3冊、(現在8冊)、本庁3冊、各政党1冊です。インターネット公開もしているが、163ページもあり、印刷禁止です。公告縦覧は名ばかりで、多くの人は見ることはできません。
市民からの増刷配備とインターネットからの印刷可能とすることを求めた所、担当の環境局環境室は「準備組合には著作権があるため、インターネットからの自由な印刷や増刷はできない」というのです。
市民は、著作権があっても、環境影響評価条例に定めればできるとして市の制度改善と準備組合への指導で住民に対する十分な情報提供を求めました。

A           環境影響評価方法書を作成するには、再開発事業の内容を準備組合は市民に説明することが必要です。しかし、今だに準備組合は、市民の前に顔も見せず、説明もしていません。

30年もの間、再開発事業に係わってきた市民から、「環境影響評価前に準備組合が住民に対して事業説明をするのはあたりまえ、小杉再開発では128mビルでも説明してきた」と指摘し、鷺沼再開発に於いては環境影響評価前に、早急に市民説明をするよう求めました。

B     環境評価手続きの次に都市計画手続があります。

都市計画は一度決定されると20年~30年も変更ができないのが通例です。今回の開発で駅前を広げるため、市道1本を廃止する計画もあります。市道を廃止することで駅前の渋滞や安全確保ができるのか、慎重な評価終了後に都市計画手続に入るよう要求しました。

3.再開発の概要と環境影響評価方法書についての意見

    市は駅前再開発の目的として、「鷺沼を生活拠点にするため、バスを増やし交通広場の拡充をはかる。駅前に憩いの広場を設け市民の交流をはかる。商業、住宅、子育て、働く場を設ける、公共施設を移転させ民間との相乗効果をはかる」等としてきました。
しかし、概要を見る限り、区民が期待するものとなっていない、なんのため、誰のための再開発?と早くも声があがってきています。

(1)駅前の再開発の内容と問題  

@     まず目に入るのが、146m37階建ての超高層ビルです。これは溝の口ノクテイビルのの2.5倍の高さ、霞が関ビルと同規模です。また北街区には92m20階建ての高層ビルです。
この狭い駅前に2棟のビルが建つと、眺望はなくなり、圧迫感、日照被害、風害、電波障害など環境破壊が心配されます。
ビルの床面積は非表示のため推測になるが、商業部分は10%程度、マンションは530戸でビル全体の70~80%を占めると思われます。駅前の一等地になぜ、多額の税金を使いマンションを建てなければならないのでしょうか? 地権者への等価引き渡をする床以外は、販売会社デベロッパーの莫大な利益となるわけです。 

A     駅前には「憩いの広場」は作らず、3階の狭い通路のような場所が広場になります。今までは、区役所前広場を使い「区民祭」など行事やお祭りで楽しい区民交流ができ、若者もダンスで賑わいましたが、狭い広場ではできなくなると思われます。

B      市がアピールしていた2つの街区をつなぐデッキも作らないので、歩行者は今と同じように商業と交通広場の間の通路を歩くことになります。特に駅前街区と北街区の間は、今までと同様に横断歩道を渡るため、信号待ちによる渋滞が心配されます。

C     交通広場を拡充しバス路線を増やすとしていましたが、何も具体的に書かれていません。
バス路線の見直しでバスが今より減る路線がでるのではないかと心配もでています。

D           駐車台数は住宅戸数530より少ない510台です。居住者、商業、公共公益施設利用者、商業荷物搬送車、家族送迎車など多数の客の出入りがあります。現在の宮前区役所の駐車場だけでも126台あり、大幅増が必要です。
自転車で駅前に来る人が多いとみているが、駅へ来る4方面からの道は上り坂道です。

(2)駅周辺に生じる問題

  @  市道鷺沼道路の廃止計画ですが、本当にこれで、渋滞の解消になるのでしょうか?
    東京フレルの裏側の市道鷺沼36号線沿いに、商業荷物搬入車、住宅利用者、商業や公共施設
    利用車、家族送迎車などの出入り口が全て集中するにも関わらず、道路幅の拡幅がないため、
    交通渋滞が予想されます。

  A  人口増に見合う、コミニテイ施設の整備が必要ですが、なにも整備予定はありません。
    武蔵小杉の駅周辺再開発では、人口増に見合う社会資本整備計画がなかったため、保育園や
    小中学校の不足、鉄道の大混雑(線路からの転落や改札渋滞)、大地震の際の高層ビルから
    の避難者受け入れ等、様々な問題が起きています。このような失敗を繰り返さないために、
    具体的な人口増予想と社会資本整備が必要です。特にラッシュ時の鉄道混雑、保育園、学校
    、福祉施設です。

B  災害に強い街づくりがメインテーマですが具体策がありません。
鷺沼駅周辺はハザアードマップで、市内でも数少ない土砂災害警戒区域です。
南海トラフ大地震が30年間に7~80%の確率で起きると言われている時期に、災害対策本部となる区役所を移転させるのは危険だと多くの区民から指摘があったにもかかわらず、土砂災害警戒区域についての対策については何も触れられていないのは驚きです。
駅裏側の線路の法面が地震により崩落したら、線路が埋まり、橋が崩落し、鉄道も道路も通行不能になることが予想されます。土壌調査と対策を明示していただきたい。

 

(3)市民館・図書館・区役所の移転で、遠方になる宮前平(黒川線道路以北)方面居住者の施設
  利用が困難となる影響を調査し、現区役所・市民館・図書館の存続と鷺沼に区役所支所・
  市民館・図書館を設ける対策を求めます。

    市はこれまで、この課題に対して正面からの議論を避けてきました。市民フォーラムでは「移転
   の議論をしているのではありません」「鷺沼にどのような機能が必要かを議論しているのです」
  「移転しなければならない理由はありません」「建物はまだ30年位は使えます」と説明してき
  ました。

  最後まで移転是非の議論を避け、市長は2月に「総合的判断」の名の下に突然の移転決定しま
 した。

   現区役所への交通不便が移転の理由とされ、移転した場合に遠方となる黒川線道路以北の人達の

  施設利用が難しくなる影響の検討は全く行われてきませんでした。

   宮前区が誕生してからの36年間、区役所・市民館・図書館は宮前区の中央に位置し、広くて静か

  で環境がよく、子供の図書館利用率は市内で一番、広場では区民祭や各種行事が開催され、毎日
  若者のダンスで賑わっています。市民館では市民の会議や講座で一杯です。

  まさに、この地が区民の大切な伝統ある交流の広場なのです。

  一方的な移転決定に多くの区民は、「どうして? なんのため? 誰が決めたの?」とあまりに
  も理不尽な決定に怒りで一杯です。

   少ないバスに乗り、わざわざ鷺沼まで行く人は少ないでしょう。特に高齢者や子供達、若者も図

  書館・市民館の利用は困難になります。

  市民館・図書館・区役所の利用が遠のく人達にどうコミニテイ施設利用を保障するかが大事です。

  宮前区の人口は1.5倍の23万人に増えたのに図書館は1館のままです。市内の他区には分館があ

  ります。市民館とその類似施設は高津区や中原区の3割以下の会議室しかありません。

  市民税納入額は市内2番目に多いのに、生涯教育の文化施設は他区に比べ最低です。宮前区と人口

  規模が同じ他都市の図書館数を比較すると調布市は11館、厚木市は10館もあります。
   図書館や市民館類似施設は徒歩圏内にあるのが基本であり、23万人口に1つの図書館はあまりに
   少なすぎます。   
       宮前区が細長く山坂が多い地形であり、バス等交通機関が大変不便な地域であることにも配慮し、
   現市民館・図書館・区役所の存続と鷺沼にも区役所支所と図書館・市民館の分館を設ける必要が

   あります。また、向丘出張所にも福祉相談や各種届出などできるよう機能充実が必要です。

 

 

4.再開発に投じる補助金・負担金・床購入費・修繕積立金等、税金投入はいくら ?

    駅前再開発にいくらの補助金・負担金が使われるのか、区民にそれだけのメリットがあるのか
  を評価していただきたいと思います。市は、開発にあたり、具体的な資金計画を立て、国の内諾
  を得ているはずですが、「事業費への補助金は国が3分の1、川崎市が3分の1」としか説明して
  いないため詳細は不明です。

   鷺沼のような都市再開発法にもとづく市街地再開発は、全国で200か所近く施行中であり、
  他に水面下の計画が多数あると言われれています。

   この事業は、限られた土地面積の上に高層ビル(高度利用)を立て、地権者に等価の床を与え
  た残りの床(保留床という)は大手デベロッパーが販売し、収益を得る仕組みです。

   全国的にみると78割の床が、収益を得る保留床扱いとみられています。

   開発の土台となる道路整備や駅前広場の整備等は市と国の負担となり、さらにビル建設事業費
  への補助金は建設総額の2~3割とみられています。

   さらに、区役所・図書館・市民館など公共公益施設を買う床代を含めると、購入床面積にもよ
  りますが、事業費全体の6~8割に税金が使われた自治体もあるようです。鷺沼再開発にも相当
  な税金投入が予想されることは間違いありません。それだけの税金を投じて、ビルの78割方が
  良質マンションと言われると納得できない、区民も多いと思います。

   国は多額の補助金・負担金を投入し、市街地再開発事業として駅前再開発を推奨しています。

   これまでの駅前再開発では、商業が倒産するなどしてビル経営の難しさがあることから、国は
  2014年にできた都市計画マスタープランである「地適正化計画」の中で「区役所や図書館・市民
  館などの公共施設を、「集客力のある公的不動産であり有効活用すべし」としています。鷺沼駅
  前開発も、この国の方針にもとづき行われているのではないでしょうか。

   (梶j不動産経済研究所の首都圏のマンション市場動向調査によれば、197月のマンション
  販売数は昨年同月の35%減少.都下では55%減少し1976年ぶりの低水準で、バブル経済
  崩壊やオイルショックに匹敵する落ち込みだと報じています。

   マンションの販売や賃貸が不振の時、どうするのでしょか、青森市では駅前ビルの倒産の責任は
  全て市が責任を負う結果になりました。鷺沼再開発が同じ失敗を繰り返さないために、マンショ
  ンは大幅減か中止にし、ゆとりある駅前広場にしたらよいのではないでしょうか。

                                      以上

 

 

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